新報こらむ 「音の小箱」

18年程前(2000年4月~10月)に琉球新報のコラム欄に執筆をさせて頂いていました。
それらの記事をご紹介します。

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音の小箱1/もっと身近に/高宮城徹夫

 まずは自己紹介を少しばかり。ご存じの方もおいでかと思いますが、結構県内の演奏会には出演しています。バイオリンを教え始めてもう十年ほどになります。
 弦楽器の魅力に取り付かれこの世界に入り込んだわけですが、弦楽器というのはほんとに不思議なもので、初めて目の前で聴いた人は皆一様にその音色にくぎ付けになるようです。
 ただしかし、ライブハウスなどでロックなどのポピュラー系の音楽をひいた時にその傾向が強く、クラシックの演奏会では当たり前と思っているのか身構えているのかそれほどではありません。やはりクラシックはお堅い音楽という印象が根強いのでしょうか。
 二年ほど前に沖縄県舞台芸術振興協同組合(略してSAPS沖縄)なるものを設立しました。クラシック音楽のみならず広く舞台芸術と呼ばれるものが、もっと社会に浸透してほしいとの願いから立ち上げました。私個人としてはクラシックのお堅いというイメージを取り払うべく、もっと身近な存在として感じていただけるように「SAPS」で活動していけたらと思っています。


音の小箱2/私にとっての音楽/高宮城徹夫

 このコラムを書くにあたっていろいろとネタを探しているうちに、私はこれまで音楽と自分のかかわりというか自分にとって音楽とは何だろうか、ほとんど考えていなかったことに気付いた。もちろん演奏したり教えたりすることを生業としている以上、音楽そのものについて考えることは多いけれど、自分とのかかわりなんて言ったって気付いた時にはもう自分のそばに音楽があるといった感じである。
 こういうことはポピュラー系のミュージシャン、とりわけフォーク系の人がよく考えていて、ライブなどでも話しているようだ。その人の考え方そのものが結局曲作りに強く出るわけだし。
 ところでここまで考えてきてもう一つ気付いたことは、クラシック系の人はこういうことをあまり考えない人が多いのではないだろうか。幼少のころからレッスンに通い、厳しい訓練に耐えてようやく音楽家という職業にたどり着くのだから。考えるより先にもう音楽してしまっている人が大半だと思う。しかしこのコラムを書くことになったのもいい機会である。自分と音楽とのかかわりについて少しずつ考えていこうと思っている。(バイオリニスト)


音の小箱3/高宮城徹夫/弾きマネ

 映画やテレビドラマなどで、主人公その他が楽器を演奏するシーンに出くわすことがある。われわれ音楽家からすると「うーん、ちょっと…」と感じられることが多い。何のドラマか忘れたが、水谷豊の弾くピアノはうまかった。確か「エリーゼのために」を弾けるまで練習したとか…。「101回目のプロポーズ」の浅野温子のチェロはちょっといただけなかったなあ。先日見た「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」という映画では、主人公のチェリストの十代を演じた子役は弾きマネ(失礼!)が上手で、成長した後を演じた女優はあんまりだった。まあ、成長すればするほど演奏する曲も難しくなる訳で当然といえば当然だけど。
 学生時代、映画研究会にいた友人と「ブッシュマン」を見ていた時、突然「よく見てろよ。次のシーンはフィルムを逆回転させてるから」と言われたことがあった。彼らには映画の撮影手法を専門的に見る癖(くせ)があり、純粋に楽しめないらしいのだ。僕ら音楽家にとっても同じことで、願わくば演奏シーンなんて出てこないように、あるいはちゃんと弾ける役者に演じてほしいなあ。チャップリンのようにね。
(バイオリニスト)


音の小箱4/自由人/高宮城徹夫

 イヴリー・ギトリスというバイオリニストがいる。沖縄にも何度か来ているのでご存じの方も多いと思う。芸術家は自由人でなければならないと言われるが、彼こそまさしくこの表現にぴったりの人で、演奏はもちろんステージでの振る舞いや生き方(といってもたいして知っている訳じゃないが)まで自由奔放である。
 レコード技術の初期の演奏家と現代とではだいぶその演奏が変わってきているが、彼は古き良き時代を残している数少ない人だろう。初めて彼の演奏を聴いた時、「愛の喜び」などの曲で知られるバイオリニスト、クライスラーの雰囲気をただよわせていると僕は感じた。
 その彼の「魂と弦」を読んだ。その演奏と同様自由奔放な文章。文脈が支離滅裂で何を読んでいたのか分からなくなる。まるでポエムのよう。翻訳しづらいのかもしれない。しかしその波乱万丈の人生からほとばしる情熱が伝わってくる。
 彼のステージを聴いていても彼の゛人間゛がダイレクトに伝わってくる。「バイオリンの演奏を生きる」と彼は表現した。むつかしいことだが僕のあこがれでもある。
(バイオリニスト)


音の小箱5/共演/高宮城徹夫

 先日「ミュージック・オブ・ハート」という映画を見た。ひとりのバイオリン教師と生徒たちが小学校の小さな教室から始めたレッスンが、さまざまな障害を乗り越えてついに音楽の殿堂・カーネギーホールでコンサートを開くといった物語である。
 まあ大した内容じゃあないねと思って見ていたら、なんとアメリカを代表するバイオリニストのアイザック・スターン本人が出てきた。しかもセリフ付き。ちょっと驚いていたら後半、パールマンやジョシュア・ベルも出てきてカーネギーホールのステージで主人公や子供たちと一緒に演奏していたので、さらにびっくり。
 主人公は例によって弾きまね(けっこうお上手でした)だが、中にはほんとに弾ける子供がいてパールマンの隣で楽しそうにバッハを弾いてた。おまけにアイ・コンタクトしちゃったりなんかして。
 僕の勝手な想像だけど、きっとこの映画での共演をきっかけにスターンにレッスンしてもらって、ジュリアード音楽院なんかに入学したりするんだろうなあ、あの子。ちょっとうらやましい…。
(バイオリニスト)
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